【副業・兼業③】割増賃金の支払いは誰が行うのか?

前回、副業・兼業の結果、法定労働時間を超える場合は割増賃金を支払わなくてはならないとお伝えしましたが、
今回はどちらの事業主が割増賃金の支払いをしなければならないのか、についてご案内します。
こちらも、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&Aからのご案内となります。

 

1.割増賃金は、原則として後に労働契約を締結した事業主が支払義務を負う

 例えば、「もともとA社で月~金週5日8時間勤務をしている従業員が、収入を増やしたいので、 
土日に近所のコンビニBでアルバイトをします。」という場合。
A社での労働契約は既に週40時間という法定労働時間に達していますので
土曜日の勤務は時間外労働にあたり1.25倍
日曜日の勤務は法定休日労働にあたり1.35倍
の割増賃金の支払い義務が、後に労働契約を締結するコンビニBに生じます。
 「もともとA社で1日8時間勤務の方が、早朝出社前に2時間コンビニBで
アルバイトを始めます。」という場合も、やはり労働契約を後に締結しているコンビニBが
1.25倍の割増賃金を支払わなければなりません。

 ガイドラインQ&Aには、もう少しややこしいパターンも掲載されています。
「もともとC社で3時間の労働契約で勤務し、その後コンビニBで3時間の
労働契約を締結した」という場合。両方の契約時間を合算しても6時間ですから
コンビニBも安心して採用ができそうです。
 ところが、この場合でも注意が必要なのです。
 例えば、C社としても「兼業しているのは知っているし、コンビニBに割増賃金が
発生するのは気の毒だ。なので1日の合計が8時間を超えないよう、2時間だけ
残業をしてね。」といわれ5時間勤務したのちに、コンビニBで勤務開始。
 その日に限ってコンビニBで「次のシフトの人が遅れそうだから1時間残業してほしい。」
となった場合、コンビニBでの勤務は4時間であってもC社と通算すると
9時間となるため、8時間超の1時間は時間外の割増賃金の支払い義務が生じるのです。

 

2.先に労働契約を締結しているのに、副業・兼業による割増賃金が発生することも 

A社のように法定労働時間いっぱいの労働契約を先に締結している場合、
兼業・副業による割増賃金の支払い義務が新たに生じることは考えにくいのですが
C社のようなケースであれば、先に労働契約を締結していても割増賃金の支払い
義務が発生する場合があります。
 例えば、上記の例で命じた時間外労働が3時間だった場合、その方がコンビニBで勤務を
すると(コンビニBで残業がなくても)通算が9時間となり、法定労働時間
を超えることになります。この場合の1時間の時間外労働割増賃金はC者が支払義務を
負うことになるです。
 先に労働契約を締結しているからノンケアでいいということではありませんので
ご注意ください。

 

3.採用時点で他の労働契約の有無の確認は必須

 コンビニBの採用担当の方はアルバイトの採用を行う際、履歴書でその方が既に
どこかで勤務していないかどうか、している場合はどういった労働契約なのかを
しっかり確認する必要がありますね。
 A社に該当する場合、副業・兼業による割増賃金の支払いは発生しませんのでほっとする
ところですが、現実的には逆のパターンもあり得ます。
 例えば、「もともとコンビニBで土日に1日4時間のアルバイトをしています。
A社に入社した後も人手不足で困っているようなので当面続けようと思います。」
といった場合、A社は採用した時点で木曜日の4時間は時間外労働として
1.25倍の割増賃金の支払義務、金曜日は法定休日労働として1.35倍の
割増賃金の支払い義務が生じる事になります。
 採用時点で他の労働契約が継続していないかの確認は必須ですね。

4.労働者が既締結の労働契約を意図的にだまっていた場合

 こうなってくると、求人に応募をする側が「割増賃金が発生することがわかると
採用に不利になる。」と考えて既締結の労働契約を隠すケースも考えられます。
この場合はどうなるのでしょう。
 会社として、経歴を偽っていることや副業・兼業の届出をしないことについて
就業規則違反を問うことはできると思いますが、労働基準法違反であることには
変わりはありません。過去分については未払賃金ということになりますので、
是正しなくてはなりません。

副業・兼業が労働契約でなく個人事業であればこういった問題は生じませんが、
労働契約の場合は、割増賃金という直接的な金銭的な負担だけでなく、正しく割増賃金を計算するための管理という負担も大きくなります。
副業・兼業推進をするにあたっては、このあたりの問題解決が必要ではないかと感じています。