前回は、「女性の活躍がなぜ必要なのか?」という部分についてまとめましたが、
今回は「なぜ今必要なのか?」という部分について考えてみたいと思います。
2.なぜ、女性活躍は「今」必要なのか?
これまで日本において女性の活躍推進の波は過去に3回あったと思います。
第1期は1986年の男女雇用機会均等法が施行された頃で、それまで男性が総合職、
女性が一般職という会社において女性総合職第1号が誕生した時期です。
第2期が次世代育成支援対策支援法(通称「次世代法」)が公布された2003年前後。
1990年の1.57ショック(1989年の人口動態統計において、合計特殊出生率が過去最低
の1.57に低下した事態)を受けて少子化問題が重視され、育児環境の整備が職場にも
求められるようになりました。
そして第3期が今回、女性活躍推進法が施行され、単に育児環境の整備を行うだけでなく、
職場での能力発揮が推進されています。
つまり、1986年に男女雇用機会均等法が施行されて30年。女性活躍推進法という法律が施行されるほど
女性の活躍の推進がゆっくであったというのが、日本の労働市場の現状です。
今回の波についても「またか」「どうせ一時的なブームだ」と感じている経営者も少なくないかもしれません。
私自身も丁度第2期の頃、とある企業内で数少ない女性管理職の一人として、ワーキングママ(パパ)を
サポートする企画を提案、実施したりしていました。少しの間立場を離れて社労士の活動をしていると、
「女性活躍推進法」が施行され「まだ世間はそんな事言っているのか」と感じたことは事実です。
ではなぜ、「今」必要であると考えるのかは以下の理由です。
①労働市場の変化が待ったなしであること(労働市場の変化)
②一部企業において、女性活躍推進の成功事例があること(女性活躍先進企業の存在)
①労働市場の変化
これは、その1でお伝えした通りで、労働者人口は減少をつづけ、さらに、働く人の価値観・
生活環境は変化をしています。この社会の流れを自社の企業努力と経営者の経営能力でとめることは
どんな大企業であっても不可能です。そうなると企業努力と経営能力を向けるべき先は、
新たな条件である「多様な価値観・生活環境の労働者」を戦力に変える職場づくり、つまり自社の変革です。
変革のために必要な要素を成功事例から推察すると以下のようなものが挙げられます。
1.経営者のコミット、経営方針への反映
2.必要な制度の整備と運用
3.生産性の向上による長時間労働の是正
4.職場風土や習慣の見直し
このうち1と2については、形だけであればすぐに取り繕うことができるかもしれませんが、3や4に
ついては一朝一夕でどうなるものでは無く、また3や4を実現しようとするならば、1、2が形式だけでは
不可能です。変革を行う際には必ず「粘土層」といわれる変革に対して(表立っては言わないが)ネガティヴな
層がいます。経営者自身が実は粘土層であるケースも少なくないのではないでしょうか。
変革には年単位の時間がかかります。実際女性活躍やダイバーシティマネジメントの先進企業といわれる
企業様も変革には数年の時間を要しており、かつ「道半ば」とおっしゃっています。
時間がかかること。それが「今」必要である理由の一つです。
②女性活躍先進企業の存在
多くの会社で経営課題は山積みで、経営者の皆様は常に優先順位を
考えて経営をされているかと思います。もしかすると「うちは法律上も
努力義務だし、大手さんがやってから」とお考えかもしれませんが、
私としてはむしろ、「大手が取り組み切ってからでは遅いのでは」と
考えています。
大企業でなくても魅力的な企業様は多くありますが、大企業の方が
採用力が強いというのが一般論だと思います。その大企業がより
働き手にとって魅力的になったなら、中小規模の企業は一層人材確保が
困難になっていきます。
新規の採用に限らず、現在在籍している従業員についても、
「若いうちはいいけど、将来の出産や育児、介護のことを考えると両立
しやすい職場への転職をしたほうがよいのでは?」と考えたりしないで
しょうか?
さらに、能力の高い従業員ほどその実現性も高く、折角採用して育てて
これからという人材が流出してしまうという経営者にとって不本意な結果を
招きかねません。
そして第2期と第3期の違いは、成功事例が一定数あるということです。
現在成功事例である第1グループ(現在の女性活躍先進企業)らは、多くの
メディアや書籍で自社を成功に結びつけた取組を紹介しています。今回の
法施行を機に、本気で取り組む会社(第2グループ)にとっては、ある
程度のノウハウが提供されていることになり、変革は簡単ではないながら、
第1グループよりも短いスピードで、変革を実現できるかもしれません。
第2グループが第1グループにおいついてくると、「標準的な会社」の
ラインが変わります。そうなると今、このタイミングで取り組まなかった会社、
第3グループは「標準的な会社」から「遅れている会社」になってしまいます。
とあるセミナーの講師の先生は「今、女性活躍推進について取り組まなかったらどうなるか?」という
問いに対して「得はしないかもしれないが、確実に損はする。」とおっしゃっていました。
政府においても「働き方改革の推進」として企業風土の変革を求めていく方向性を打ち出しています。
法律の施行とは別に、もともと経営課題として重視していた企業様も少なくないかもしれません。
これまで女性の活躍推進や、多様な価値観・生活環境の働き手の活用について、あまりお考えで
無かった企業の経営者様も、一度検討されてみてはいかがでしょうか。