今、労働局や弁護時事務所、社労士事務所等があちらこちらで「無期転換対策セミナー」を
実施しています。厚生労働省では「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」が8月末に
開設されました。
平成24年に改正された労働契約法第18条の無期転換権発生までいよいよ1年半を切り、
多くの企業様で準備をされているのではないでしょうか。ご質問も多くありますので当サイト
でも内容や対応についてご案内したいと思います。
1.労働契約法第18条の概要
第18条は「有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換」を定めたもので、
1項では転換の要件、2項では対象となる契約の通算方法についてを定めています。
まずは、無期転換の要件から確認をしたいと思います。
①無期転換の要件(労働契約法第18条1項)
条文の内容をまとめると以下のとおりです。
<契約の状態> | <労働者の行為> | <法律の効果> |
同一の使用者と労働者の間で二以上の有期労働契約の通算期間が5年を超えるとき | 現に締結している有期労働契約の契約期間満了日までの間に、期間の定めのない労働契約の締結を 申込をする。(無期転換権を行使する) | 使用者は原則として有期労働契約の労働条件(契約期間を除く)で申し込みを承諾したものとみなし、有期労働契約期間終了後、無期雇用となる。 |
この法律は平成25年4月1日以降を初日とする有期労働契約について適用されます。
つまり1年単位の契約であれば平成30年4月1日は、無期転換権を行使できる有期契約労働者が現れることになります。
尚、有期労働契約期間の上限である3年単位で更新を行っている場合は、すでに平成28年4月より
無期転換権が発生していることになります。
仮に、無期転換権が発生した初めの契約期間において労働者が無期転換の申し込みを行わなかった場合でも、
再度契約が更新された場合、新たに更新された契約期間において再度無期転換が発生します。つまり、有期契約を
5年以上継続すると、使用者(企業側)の意思には関係なく、労働者の希望のみで労働契約を無期化することが
できるということです。
②契約期間の通算の考え方(労働契約法第18条2項)
上の図の事例のように契約期間が連続している場合は分かりやすいですが、中には断続的に契約されている
ケースもあるかと思います。また、一度退職した有期契約社員を再度雇用するケースなども考えられます。
この場合はどのように契約期間を通算するかというと以下のようになります。
契約期間が1年以上である場合は、6ヶ月以上の空白期間があった場合通算契約期間のカウントはリセットされます。
(このリセットに必要な期間をクーリング期間といいます。)
このクーリング期間は、カウントの対象となる契約期間が1年未満の場合は契約期間により異なりますのでご注意ください。
※厚生労働省令(労働契約法第18条第1項の通算契約期間に関する基準を定める省令2条)
カウントの対象となる有期労働契約の契約期間 | 契約が無い期間(必要なクーリング期間) |
2ヶ月以下 | 1ヶ月以上 |
2ヶ月超~4ヶ月以下 | 2ヶ月以上 |
4ヶ月超~6ヶ月以下 | 3ヶ月以上 |
6ヶ月超~8ヶ月以下 | 4ヶ月以上 |
8ヶ月超~10ヶ月以下 | 5ヶ月以上 |
10ヶ月超~ | 6ヶ月以上 |
まずは、無期労働契約への転換についての概要についてお伝えしました。
次回以降は無期転換ルールの特例や必要な対策についてご説明していきたいと思います。
【無期雇用転換制度②】無期転換ルールの特例
【無期雇用転換制度③】必要な準備~無期雇用社員の就業規則を作成する前に~
【無期雇用転換制度④】必要な準備~無期雇用社員の就業規則を作成する前に、その2~
【無期雇用転換制度⑤】必要な準備~法的対策①就業規則の整備~
【無期雇用転換制度⑥】必要な準備~法的対策②無期転換手続の整備~
【無期雇用転換制度⑦】就業規則作成のポイント①第二定年
【無期雇用転換制度⑧】無期雇用転換権の周知
【無期雇用転換制度⑨】無期雇用転換権の放棄
【無期雇用転換制度⑩】関連して行われる制度等変更