【無期雇用転換制度⑤】必要な準備~法的対策①就業規則の整備~

前回は具体的な法的対策の前段階の整備についてまとめましたが、今回はいよいよ法的対策について
まとめたいと思います。
法的対策として必要な事項は大きくわけて2つです。
  1.無期雇用社員の就業規則の整備
  2.無期転換権行使の際の手続き方法の整備
今回はこのうち無期雇用社員の就業規則の整備についてまとめたいと思います。

 

1.なぜ無期雇用社員専用の就業規則が必要なのか?

 無期雇用転換制度の対策として「無期雇用就業規則対策」がよく挙げられてますが、
なぜ新たな就業規則が必要なのかは、条文が次のように定められているためです。 

労働契約法第18条1項 (有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(…中略…)この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

 原則は、契約期間をのぞいて有期労働契約と同一の労働条件を引き継ぐことになるのですが、
「別段の定め」があれば例外的に労働条件を変更できるということになるため、「別段の定め」として
「就業規則を作成して定めましょう。」というわけです。

 また、「労働条件が有期契約の内容であれば、特段問題が無い」という場合でも注意点があります。
 現在社内にある就業規則の適用対象はどうなっているでしょうか。
例えば、無期雇用者を適用対象とする就業規則が「正社員就業規則」しか無い場合、仮に個別の労働契約で
無期雇用社員の労働契約を定めたとしても、個別の労働契約と比較して「正社員就業規則」の方が
有利な条件であれば、個別の労働契約の内容は無効となってしまいます。

労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)
 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

適用させたい就業規則が適用されるよう、整備をしなくてはなりません。

2.就業規則の作成方法

 前回、前々回でお伝えしております「就業規則作成の前に」を踏まえると、自社における無期雇用社員の
位置づけがはっきりしてきていると思います。各社様の状況に応じて具体的な作成にうつりましょう。
作成パターンは以下ものが考えられます。

無期雇用化した後も、担う職務や役割責任は原則として有期契約と変わらない。
 →①現状の有期契約労働者の就業条件を契約期間に関連する条項を除いて継承する。

無期雇用化することで、担う職務や役割責任を広げキャリアアップを図る。
 →②現在無期雇用である正社員の就業条件をベースに、担う業務内容と責務に応じて条項の一部を改訂する。

それぞれに、具体的な改定項目をいくつか挙げてみます。
(実際の改定の際には、各社の方針により他にも改定が必要な項目がありますので、あくまで参考として)

①現状の有期契約労働者の就業条件を契約期間に関連する条項を除いて継承する。

改定項目改定内容
 適用範囲

「契約社員」→「無期雇用社員」
「有期労働契約を締結した社員」→「無期労働契約を締結した社員」
「期間を定めて労働契約を締結した者」→「期間の定めの無い労働契約を締結した者」
など、無期雇用の表現に修正する。もしくは契約社員の就業規則の適用対象に追加する。

 退職「雇用契約期間が終了したとき」という文言があるケースが多いので、無期雇用社員専用の場合は削除する。
定年

一般的に有期契約社員は定年の定めがないので条項を追加する。

60歳以降の無期転換も想定し、第二定年なども検討する。

休職制度

一般的に有期契約の場合は休職の定めがない場合が多いので、定めるか定めないかを検討する。定める場合は、期間等の条件を正社員と比較してどのように設定するか検討する。

②現在無期雇用である正社員の就業条件をベースに、担う業務内容と責務に応じて条項の一部を改訂する。

適用範囲無期雇用ではあるが、従来の正社員とは対照が異なることが分かるように明記する。
従来の正社員就業規則についても、新設の無期雇用社員は適用除外であることを明記すると良い。
異動・転勤・役職任命

有期契約の場合は異動や転勤がない場合が多いが、対象とするかどうかを検討する。

賃金に関する事項

正社員と職務や責任等を比較した上で、均等・均衡を保てるように定める

上記はあくまでも一部の例です。実際に改定を行う際は、条項別に変更の必要がないか検討してください。